退去費用と原状回復トラブルについて
よく「退去時に高額な請求をされた!」と、トラブルになった話は聞かれたことはないでしょうか? 昔は結構、高額な請求をしてくる業者もかなりあったようで、そういった会社出身の元同僚の営業マンは「退去請求こそ営業マンの腕の見せ所!」と豪語している人にも出会ったことがあります。苦笑
では最近は実際の所どうなのでしょうか? 今回の記事では、退去時に実費を請求されるケースや、ハウスクリーニング代の考え方、高額請求された場合の切り返し方、仕方ないケースなどの情報を提供させて頂きます!
1.そもそも退去時の清掃代は誰の負担?
最初にそもそも論のお話です。賃貸で住んでいたのだから、生活して行く中である程度お部屋が汚れたり古くなったりするのは当たり前と言えば当たり前です。ですので、「普通に使っていて当然にそのくらいは汚れたり古くなったりするよね?」と客観的に思われる部分については、原状回復費用はオーナーさん側の負担になると、国土交通省が策定した「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(←とても大事な部分なのでリンクを貼ります。一度読んでおいてください)に定められています。
「だったら払わなくて良いじゃねーかよ!クリーニング代返せ!」となる人がいたり、恥ずかしげもなくYoutubeやブログなんかで「払わなくて良いです!」とか言っちゃってる人もいるのですが、ちょっと待って下さい! このガイドライン自体は「絶対そうしなければならない」という強行規定ではなくて、実際は「特約で別段の定めを妨げない」規定になります。要は契約で「〇〇円までは借主さんが持ってね」と規定することが可能という訳です。
(ただし、その場合は具体的な金額まで定めておく必要があると判例で示されています)
2.実費精算になる場合
それでは特約でハウスクリーニング代30,000円+消費税で規定をしていたとします。この場合はそれ以上取られないのでしょうか? 実は先ほど出てきたガイドライン上も「通常使用における損耗」や「借主の故意または過失による損耗・損傷」については借主の負担となるのです。例を挙げると「アイロンを落としてフローリングが凹んだ」(←私、やらかした事あります!泣)とか、「模様替えで家具を動かしたときに壁を傷つけた」「猫を飼っていて柱で爪を研いでいる」といったケースです。こう言った場合の費用は入居者の負担になりますので、なるべく傷をつけないように大切に使って下さいね。
ちなみに仮に故意・過失によってお部屋を傷つけてしまっても、火災保険で直せる場合がありますので、もしやってしまった場合には一度私に相談してみて下さい。状況によってはお力になれます。
3.退去時に高額請求された場合
それでは大した傷もつけていないのに高額請求された場合にはどうしたら良いのでしょうか? その時は、先ほどの1でリンクを張り付けた「原状回復におけるガイドライン」のお話をしてみて下さい。言い方としては「国土交通省のガイドラインでは通常使用や経年変化による損耗は貸主負担と書いてありましたが」とこんな感じで良いでしょう。大体の会社は引き下がります。では、それでも強気に出てきた場合はどうしたら良い?・・・その時は傷や汚れがついていると退去立会に来た担当者が主張する部分の写真を撮って、「では大阪府庁の見解を聞いてみるようにします」と言ってあげて下さい。(他府県の場合は都道府県庁に不動産の窓口があるはずです)
ただ、中には「それは高額請求されるでしょ!」というケースもあります。次の項目で例を挙げておきます。
4.高額請求されても仕方ないケース
水廻りから水漏れしているのを分かっていて放っておいた。それによって水廻りが腐っていたり痛んでいた場合は「善管注意義務違反」となり、入居者負担になります。確かに水漏れがするのは入居者の責任ではない場合がほとんどです。しかし、入居者には「善良な管理者としての義務」が課せられているため、放っておいて損害が広がってしまった場合には入居者が負担することになります。
他には「無断でペットを飼育していて、明らかに部屋が傷んでいる」この場合は通常損耗を超えるのと、そもそもペットの無断飼育は契約違反なので、損害賠償事由になるのは容易に想像できると思います。絶対にやめて下さい。
後は言わずもがなですが、ゴミ屋敷パターンですね。これが一番高額になる可能性が高いです。水回りの交換やフローリングの腐食まで行くと、下手をすると百万円以上の請求になる可能性もあります。
5.居住年数が長い場合
ちなみに居住年数が長い場合のお話も少ししておきます。賃貸のお部屋って大体2~3年くらいで退去されることが多いんです。でも中には5年以上お住まいされる方もおられます。先ほどの原状回復のガイドラインにも書かれているのですが、例えばお部屋の壁紙の耐久年数は6年と規定されています。要は6年以上住んでいた場合、壁紙がめっちゃ汚れていたとしても、原則は実費請求されないことになります。(壁紙自体にもう価値が残っていない為)
ただ、この場合も「猫が壁に傷をつけていて、傷が壁のボードまで達している場合」などは当然に実費請求になりますので、この辺りは注意が必要です。
6.他に注意しておくことは?
その他に注意して頂きたい点としては、退去立会の日が決まったら、その日までにはお部屋の中を完全に空っぽにしておくことです。その際に、シーリングライトがついていなかった部屋にシーリングライトを残してしまったり、逆に洗濯機置き場についている「エルボ」と呼ばれるL字型のシリコンかゴムで出来たパーツを誤って持って行ってしまった場合、エアコンのリモコンやお部屋の取扱説明書を引越しの際に持っていってしまっている場合。廊下の電気などを切れたままにしている場合などは実費を請求される可能性が高いです。あとは鍵を紛失している場合ですかね。ここに挙げたものは結構ありがちな実費精算のパターンなので、引越し作業の際にも気を付けて下さいね。
まとめ
いかがだったでしょうか? 私は管理会社側の立場のこともありましたので、立会いの時などに「あぁ、ちょっと気を付けてくれれば実費請求しなくて良かったのにな」など、思うことも度々ありました。(私のスタンスとしては、出来れば請求したくない) 少し気を付けておいたり、知識をつけているだけで退去時に無駄な費用を払わずに済むことも多いので、参考にして頂けますと幸いです。
投稿者プロフィール
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1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。
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