相続財産を共有するとトラブル発生!? 知っておくべき4つのリスクと解決策
相続財産を共有すると、一見すると仲良く分け合えるように思えます。しかし、共有には様々なリスクが潜んでいます。この記事では、相続財産を共有する場合に発生する4つのリスクと、それぞれの解決策を分かりやすく解説します。さらに、共有を避けるための方法も紹介しているので、相続でトラブルを防ぎたい方はぜひ参考にしてください。
目次
はじめに:相続財産の共有とは?
相続財産を複数人で共有する場合、それぞれの相続人が共有持分という権利を持ち、財産を共同で所有することになります。一見すると仲良く分け合えるように思えますが、共有には様々なリスクが潜んでいます。
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
※他にも共有については変更・保存・処分などについて民法上、沢山の規定があります。
共有すると発生する4つのリスク
2.1. 意思決定の難航
共有財産の管理や処分には、共有者全員の同意が必要です。所有者間で意見が対立した場合、意思決定が難航し、長期間問題が解決されない可能性があります。
→例えば、相続財産に不動産があったとします。簡易な保存行為などは共有者の単独で行うことが出来るのですが、例えば大規模な修繕が必要になったり、売却をしようと思った場合には共有者全員の合意形成が必要になります。
2.2. 不動産の売却・活用が困難になる
共有不動産の場合、売却や賃貸には共有者全員の同意が必要です。一人の反対でも売却が不可能になるため、所有者間の関係が悪化すると、不動産を有効活用できなくなる可能性があります。
→例えば、ご実家を売却する場合ですが、長男は売却する方が良いと考えているけれども、長女は思い出のある場所だから残しておきたいと希望をしている場合などです。相続人間での意見の違いや何に重きを置いているかで合意形成が上手く行かないことがあります。
2.3. 共有名義人の変更
共有者の一人が死亡した場合、その持分は相続人に引き継がれます。共有者が増えると意思決定がさらに複雑化し、トラブル発生のリスクが高まります。
→例えば前述の長女が亡くなったとすると、長女の持分はその相続人(ご主人やお子さん)に引継がれることになります。当然、合意形成に更に時間がかかったり複雑化することになりますので、どんどん難しくなっていく・・・というイメージです。
2.4. 将来の相続でトラブル再燃
共有財産を相続した相続人がさらに亡くなった場合、その共有持分を巡って再び相続争いが発生する可能性があります。
→登場人物が多ければ多いほど、紛争の可能性も高くなり、合意形成に時間もかかるようになります。それではリスクを回避するためにはどうしておけば良いのでしょうか?
リスクを回避するための解決策
3.1. 事前に話し合い、共有のルールを明確にする
共有する前に、財産の管理方法、処分方法、収益金の分配方法などについて、共有者全員で話し合い、ルールを明確にしておくことが重要です。
→可能であれば、被相続人さんが元気なうちに、遺産の行方を考えて遺言書を作成しておくのが理想ですね。(ちなみに認知能力に陰りが見えてから始めると、そもそも遺言能力に疑義が生じて無効となるケースもございます)
3.2. 分割協議で財産を分ける
共有財産を分割協議で分割することで、共有を解消することができます。
→不動産の共有が特にもめやすいので、先々を考えて売却して金銭に変えてから生前贈与したり、綺麗に分割出来るように準備しておくことがトラブル防止に役立ちます。
3.3. 代償分割で金銭で解決
分割が難しい場合は、代償分割といって、一人が他の共有者に金銭を支払うことで、共有持分を買い取る方法もあります。
→先ほどの長男長女の場合で例えると、実家を残したい長女に不動産は相続させて、長女が長男に相当の金銭を支払って丸く収めるというイメージです。
3.4. 特別寄与料の請求
共有財産の管理や維持に特別に貢献した人がいる場合、他の共有者に対して特別寄与料を請求することができます。
→例えば先ほどの長男の奥さんが、被相続人さんの介護を率先して対応していた場合などです。ちなみにひと昔前は寄与料が認めらるのは相続人のみだとされていました。
特別の寄与
第千五十条 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
共有を避けるための方法
4.1. 生前贈与
生前に財産を贈与することで、相続財産を減らすことができます。
→今後、制度が変わる可能性があると言われていますが、年間110万円を上限に贈与をしてくと、贈与税をかけずに財産を移して行くことが可能です。
4.2. 遺言書の作成
遺言書で財産の分配方法を明確にしておくことで、共有を避けることができます。
→元気なうちに遺言書を残しておくことが、トラブルを回避するのに一番有効な方法だと思います。また、その方法も自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にしておくと、費用はかかりますが裁判所の検認の手続き不要で相続を始められますので、元気なうちに遺言書を書いておくことをおススメします。
参考:自筆証書遺言と公正証書遺言に関しての記事を書いていますので、宜しければご参照下さい。
まとめ
相続財産、特に不動産を共有すると、意思決定の難航、不動産売却・活用困難、共有名義人の変更、将来の相続でトラブル再燃など、様々なリスクがあります。これらのリスクを回避するためには、共有する前にルールを明確にし、共有を避ける方法も検討することが重要です。
また、弊所は不動産屋も兼業になりますので、遺言書や遺産分割協議書の作成だけでなく、不動産売却のお手伝いもワンストップで対応可能ですので、面倒な相続の手続きもスムーズに進めることが可能です。是非ご相談下さいませ。
投稿者プロフィール
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1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。
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