遺言書があっても分割協議をするケースもあります│行政書士が解説
故人の意思を尊重するためには、遺言書の存在は非常に重要です。遺言書があれば原則としてその通りに遺産を分割していくケースが多く、トラブル防止にも高い効果があります。しかし、遺言書があっても、その通りに遺産分割が行われないケースもございます。本記事では、遺言書があっても遺産分割協議で遺産を分割するケースについて解説します。
目次
1.1. 遺言書の種類と法的効力
遺言書には、大きく分けて以下の3種類があります。
- 自筆証書遺言:手軽に作成できるが、形式上の不備により無効になる可能性がある
- 公正証書遺言:公証人の関与により形式上の有効性が確保される
- 秘密証書遺言:作成方法が複雑だが、遺言内容の秘密性を保てる
遺言書は、民法で定められた形式を満たしていれば、法的効力を持つと言えます。
参考:それぞれの違いを解説した記事がございますので、宜しければお読みください。
1.2. 遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、相続人全員で話し合いを行い、遺産の分け方を決定する手続きです。
遺言書がない場合には遺産分割協議を行って、その結果を遺産分割協議書にまとめて遺産の分割をしていくのですが、遺言書がある場合でも遺言の内容とは異なる方法で分割する場合もありますので、今日はその内容について掘り下げます。
1.3. 遺言書と遺産分割協議の優先順位
原則として、遺言書の内容が優先されます。しかし、以下の場合には、遺言書とは異なる遺産分割協議を行うことも可能です。
- 相続人全員の合意
- 遺留分侵害額請求
- 特別受益
次の項目からはそれぞれのパターンについて解説していきます。
2. 遺言書と異なる遺産分割協議を行う3つのパターン
2.1. 相続人全員の合意
例えば以下のような場合に、相続人間で「遺言の通りに分けない方が良いのではないか?」となった場合などがあります。
- 介護を担ってきた相続人に、遺言書よりも多くの遺産を分配したい
- 遺言書で特定の相続人にのみ遺産を遺贈していることに納得できない
注意点:
- 全ての相続人が納得できるまで話し合いを行い、合意形成を図る必要があります。
- また、遺言の内容で一定期間遺産の分割を禁止している場合などは相続人間での協議でも分割は出来ません。
- 遺言執行者や受遺者がいる場合は、事前に同意を得る必要があります。
2.2. 遺留分侵害額請求
遺留分とは、相続人が最低限取得できる遺産の割合です。通常は遺言書を書く際に遺留分を侵害しない内容で遺言書を書くのが一般的(というよりマスト)なのですが、専門家のアドバイスを受けずに作成したり、慣れていない方の監修の元で作成された遺言書は、遺留分に配慮されていない場合もございます。そういった場合に、遺言書によって遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができます。
(遺留分の帰属及びその割合)
第千四十二条 兄弟姉妹以外の相続人は、遺留分として、次条第一項に規定する遺留分を算定するための財産の価額に、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める割合を乗じた額を受ける。
一 直系尊属のみが相続人である場合 三分の一
二 前号に掲げる場合以外の場合 二分の一
請求方法:
- 遺留分侵害額を計算する
- 相続人に対して、遺留分侵害額の支払いを請求する
2.3. 特別受益
特別受益とは、相続人特定の相続人が、被相続人から生前特別に受けた贈与などです。例えば、次男がマイホームを購入するときに、被相続人の資金的な援助を受けて購入した場合などが該当します。遺産分割協議では、特別受益を考慮する必要があります。
持ち戻し計算方法:
- 特別受益額を算出する
- 特別受益の持ち戻し額を計算する
遺留分との関係:
特別受益は、遺留分の計算にも影響します。
3. まとめ:遺言書と遺産分割協議の適切な活用
遺言書は、故人の意思を伝える重要なツールです。しかし、遺言書の内容が常に最適であるとは限りません。
遺産分割協議は、相続人全員で話し合いを行い、遺産の分け方を決定する手続きです。遺言書の内容に納得できない場合や、状況に応じて柔軟な遺産分割を行いたい場合には、遺産分割協議を活用することができます。
遺言書作成のメリットとデメリット
メリット:
- 故人の意思を明確に伝えることができる
- 遺産分割協議をスムーズに進めることができる
- 相続争いを防ぐことができる
デメリット:
- 作成に時間と費用がかかる
- 形式上の不備により無効になる可能性がある
- 状況変化に対応できない
遺産分割協議の重要性
- 遺言書の内容に納得できない場合に、自分の意思を反映できる
- 相続人全員で話し合い、円満な遺産分割を目指すことができる
- 将来のトラブルを未然に防ぐことができる
専門家への相談がおすすめです!
上記のように、遺言書の内容がみんなが納得のいくような内容でなかった場合には、結局、遺産分割協議が必要になったり、その過程で結局もめてしまったりと、新たなトラブルを発生させてしまう場合もございます。
大事なことなので協調しておきます。・・・揉めたら弁護士さんに入ってもらわないといけない為、費用も高額になり、解決まで時間もかかります。(行政書士は揉め事には介入できません)
「紛争予防なら行政書士」揉めない為の遺言書サポートはフェイス行政書士事務所へご相談下さい。
投稿者プロフィール
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1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。
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