【コラム】遺留分について思う事│トラブル事例と共に解説
相続問題でトラブルになりやすい「遺留分」という制度ですが、なんでこんな制度が今でも残っているのか個人的には疑問に思っています。今回は「遺留分」の趣旨の解説と、トラブル事例のご紹介と個人的に思う事など交えて解説していきます。
遺留分の制度の趣旨とは?
遺留分の制度は、一定の遺族(法定相続人といいます)に最低限の財産を相続させることを保証する制度です。その趣旨は諸説ありますが、有力な説の中から例を一つ取り上げます。
例えば、亡くなったお父さんが遺言書を残していて、その内容は「愛人のアケミちゃんに財産をすべて遺贈する」という内容だったとします。遺族にとっては晴天の霹靂。トラブルになること必至のヤバ目の遺言ですが、お父さんには、自分の財産処分の自由が認められているとも言えます。このお父さんの自己決定権を尊重し過ぎると、残された遺族の生活が脅かされることにもなりかねません。そこで、相続財産の一定割合を遺族に補償する制度を作っておくことで、お父さんの自己決定権と遺族の生活権のバランスを取るためと言われています。
コラム:愛人にすべての財産を遺贈出来るのか?
上記の例で書いた「愛人のアケミちゃんに財産をすべて遺贈する」という遺言は有効になるでしょうか? 様々な判例を見て行くとご家族や愛人との関係性によっても変わってくるのが答えではないかと思います。例えば、明らかに財産目的で近づいてきたポッと出の派手な女に、ついつい魔が差してしまったケースなんかだと、公序良俗違反として無効となる可能性があるようです。(当然、最終的には裁判所が判断をするのでしょうが・・・) 逆に家族との関係が実質的に破綻している中で愛人の元に身を寄せ、長年一緒に同棲して客観的に見ても生計を一にしている間柄であった場合は愛人への遺贈は有効と認められるようです。この場合は遺留分が争点となりますが、いずれにしても、全額を愛人に遺贈する遺言書の場合は争いは避けられないと考えます。(もしこうしたトラブルをお持ちの場合はお近くの弁護士さんにご相談ください。)
(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。
遺留分を巡るトラブル事例
遺留分という制度に違和感を感じるのが次の事例のような場合です。夫に先立たれてその遺産は奥さまが多くを引継がれました。その奥さまもお歳を召して来られて段々と身体の自由も効かなくなりました。そんな奥さまを長男夫婦はしっかりと面倒を見てくれています。孫たちも長男夫婦と一緒に顔を見せてくれたりと、関係は良好です。それに引き換え次男はまったく顔も見せに来ないで、家にも寄り付きません。
奥さまの心情としては長男夫婦や孫たちに遺産を残したいと考え、遺言書で全額を長男に引継がせるよう指定しました。
しばらくして奥さまは亡くなり、葬儀の日を迎えました。
久し振りに顔を合わせた次男は相変わらず、自分のことしか考えていないようです。顔を見るなり「遺産のことだけど」とお金の話ばかりしたがります。
遺言書で全額を長男に引継がせるよう指定しましたが、次男は「じゃあ遺留分を請求するから」と遺留分侵害額請求を申し立てると言い出しました。
この状況をみてどのように感じますか? 長男さんや亡くなられた奥さんのお気持ちは分かりますが、法的な切り口でいうと次男の主張が正しいことになります。
このような状況の場合、どうすれば良いか?
上記のような状況だった場合、どうしておけば良いと思いますか? 方法はいくつかありますが、恐らく次男と話を付けて遺留分を放棄させるのは難しいでしょう。こうした場合には生命保険などを使って相続財産自体を圧縮しておいたりする方法が有効です。(生命保険金は受取人固有の財産とみなされる為、掛け金は奥さまが支払って、受取人を長男や孫に設定しておくことで相続財産を圧縮させることが可能なためです)
遺留分に関して、個人的に思う事
上記のトラブル事例でもそうですが、この遺留分という制度・・・本当に必要ですか?と個人的には思っています。遺留分があることでトラブルに発展したり、法的な関係性が複雑になったりと、あまり良い制度には思えません。実際に「遺留分制度は廃止にするべき」や「制度の内容について見なおすべき」など様々な意見があるようですが、まだ実現には至っていません。
制度として残っている以上、それに従わざるを得ないのも、我々、士業の立ち位置と言えるでしょう。それを踏まえて、遺言書などの生前対策をきちんと考えておくことが、今対応することのできる最善の方法なのだと思います。相続について前向きに検討される際は、是非ご相談いただけますと幸いです。
投稿者プロフィール
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1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。
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