不動産の管理行為に見る、生前対策の重要性
不動産が絡む相続について、よく問題になってくるのが、兄弟で共有にしてしまった場合などがよく問題になります。誰にも相談しないで単純に法定相続をしてしまった場合に起こり勝ちなトラブルですが、実際、何が問題になってくるのか?を解説していきます。相続財産に不動産のある方は、必ず生前対策をしておいた方が良いのでご参考にしてください。
法定相続分について
親が非相続人で、配偶者は既に死亡、長男と長女のお2人が法定相続人だった場合は、長男・長女のそれぞれが1/2づつが法定相続分(元々法律の規定で決まった相続分)になります。不動産はなるべく共有にしない方が良いと言われていますが、なぜなのか? 次からの項目で解説して行きます。
不動産の管理行為
不動産に限らず、共有物を管理する場合には、民法の規定に従って管理や処分をすることになります。下記の規定をご参照ください。
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項(次条第一項に規定する共有物の管理者の選任及び解任を含み、共有物に前条第一項に規定する変更を加えるものを除く。次項において同じ。)は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。共有物を使用する共有者があるときも、同様とする。
2 裁判所は、次の各号に掲げるときは、当該各号に規定する他の共有者以外の共有者の請求により、当該他の共有者以外の共有者の持分の価格に従い、その過半数で共有物の管理に関する事項を決することができる旨の裁判をすることができる。
一 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
二 共有者が他の共有者に対し相当の期間を定めて共有物の管理に関する事項を決することについて賛否を明らかにすべき旨を催告した場合において、当該他の共有者がその期間内に賛否を明らかにしないとき。
3 前二項の規定による決定が、共有者間の決定に基づいて共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
4 共有者は、前三項の規定により、共有物に、次の各号に掲げる賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(以下この項において「賃借権等」という。)であって、当該各号に定める期間を超えないものを設定することができる。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃借権等 十年
二 前号に掲げる賃借権等以外の土地の賃借権等 五年
三 建物の賃借権等 三年
四 動産の賃借権等 六箇月
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる。
e-Gov法令検索参照
大事なポイントは「管理行為は各共有者の持分価格の過半数で決する」と言うポイントです。過半数とは51パーセント以上のことなので、1/2ずつの持分の場合は、見方をかえると「2人ともの同意がないと管理行為が出来ない」ことを意味することになります。
共有物の管理行為を表にまとめました
項目 | 内容 | 制限 |
保存行為 | 共有物の現状を維持する行為 | 各共有者が単独で行為可能 |
管理行為 | 共有物を利用する行為 | 共有者の持分価格の過半数で決定 |
変更行為 (軽微な変更) | 形状または効用の著しい変更をともなわない行為 | 共有者の持分価格の過半数で決定 |
変更行為 | 共有物の形もしくは性質に変更を加える行為 | 共有者の全員の同意が必要 |
トラブル事案
先ほどの兄妹が親の不動産を引継いだとします。兄は売却して現金化したい。妹は修繕して親族に貸したいと思っている場合はどうでしょう?この場合は同意がないと、どちらも叶えられないことになります。もっと厳密に言うと、兄は自分の持分だけを売却することは出来るのですが、その場合は評価額よりもかなり少ない金額でしか買ってもらえない為、損するのは目に見えている状態になります。
妹の目線に立つとどうでしょう? 仮に親族が身体が不自由な方で、手すりなどバリアフリーの工事が必要だったとしたら、兄の同意がないと変更行為が出来ないことになります。工事に要する費用も誰が負担するのか?など、権利関係が複雑になってきます。
こういった事情から、不動産の共有はなるべくなら止めておいた方が無難です。
では、どうすれば良かったのか?
こういった状況を防ぐためにはどうしておけば良かったのでしょうか? 有効な手段としては以下の内容が考えられます。
- 遺言書を書いて不動産を誰に相続されるかを明確にしておく
- 生前対策として相続財産について家族で話合っておく
- もし施設に入ることになって、誰も住まない場合には売却して現金化しておく
この辺りが有効な対策になります。逆をいえば、何も対策せずに法定相続をして、不動産を共有にしてしまったことが一番の問題だったことになります。
分かっていれば対策出来たかも知れません
そうです。分かっていれば対策が出来たかも知れません。自分に生前対策が必要かどうか分からない場合には、行政書士を始めとした専門家に一度ご相談ください。弊所では不動産屋を併設しておりますので、遺言・相続に関するご相談に限らず、不動産売却についてもワンストップで対応可能でございます。
投稿者プロフィール
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1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。
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