【会社設立】定款が簡単に作れるようになるらしいです

2024年5月28日のニュースで定款認証の手数料を、従来は資本金の規模に応じて3~5万円だったのを、資本金100万円未満の起業を対象とする最低区分を15,000円にする方向で検討するとの情報が入りました。政府の起業支援施策との見方のようですが本当にそうでしょうか? また、定型の定款を簡単に作成できるようにするシステムの構築を進めているようですが、色々トラブルになる気もしています。留意点をなるべく簡単に解説して行きます。

そもそも定款とは何か?

**定款(ていかん)**は、会社の基本的なルールを定めた書類です。いわば、会社の憲法のようなものです。

会社設立時に必ず作成し、公証役場で認証を受ける必要があります。

定款には、以下のようなことが記載されています。

  • 会社の名称(商号)
  • 事業内容
  • 本店所在地
  • 発行される株式の総数
  • 決算月
  • 役員の選任方法
  • 株主総会の招集方法
  • 利益の配当方法
  • 解散の方法

定款は、会社の組織運営の根拠となる重要な書類なので、正確に作成することが大切です。

なお、定款には、絶対的記載事項相対的記載事項任意的記載事項の3種類があります。

  • 絶対的記載事項:必ず記載しなければならない事項(商号、事業目的、本店所在地など)
  • 相対的記載事項:法律で定められた記載方法がある事項(役員の選任方法、株主総会の招集方法など)
  • 任意的記載事項:任意で記載できる事項(利益の配当方法、解散の方法など)

定款作成の際の注意点

定款作成を行政書士などの士業に依頼をした場合は、出来るだけ問題が起こらないように、かつ銀行の融資などで不利にならないような定款を書いてもらえるのですが費用がかかるのがデメリットです。では、知識のない方でも手軽に定款を書けるようになることで予想されるデメリットなどはなんでしょうか? 以下の点が、現段階で「きっとこんなミスをするだろうな・・・」と予測の出来る内容です。

許認可が必要な場合に必要な事業内容が入っていない

会社を設立すると、履歴事項全部証明書(通称:謄本)を取得できるようになります。この謄本には定款で定めた「事業内容」が記載されるのですが、営業をするために許認可が必要な業種で会社運営を検討している場合、必要な事業内容が記載されていない場合には、登記からやり直しになってしまう場合がございます。当然、登記を変更する為には手数料がかかってきますので、定款作成の段階から「事業内容」に気を付けて記載する必要があるのです。

※ちなみに税理士や司法書士が書いた定款にも、事業目的に配慮されていない場合も時々あります。例えば不動産会社の設立で、不動産取引については書かれているが、内装工事や損害保険についてはなにも書かれていないケースなどが挙げられます。(不動産会社は古いマンションを買って、内装工事でめっちゃ綺麗にしてから再販する事業が結構流行っています。また、団信や損害保険など、保険を取り扱わなければならないケースも出てきます)

事業内容を盛り込みすぎている

銀行に融資を申込たいとします。仮にあなたが銀行の融資審査の担当者だったとして、下記のような事業内容の謄本を持って来られたら、どのように感じるでしょうか?

  1. 不動産の所有、売買、賃貸借及びその仲介、管理等に係る業務
  2. 住宅、事務所、店舗等の内装工事の設計、施工、改修及び監理に関する事業
  3. 各種損害保険代理業及び生命保険の募集に関する業務
  4. 不動産開発並びに不動産活用に関するコンサルタント業務
  5. 住宅宿泊事業法に基づく、宿泊事業、管理業及び仲介業
  6. 古物営業法に基づく古物商
  7. レストラン、バーの経営並びに経営コンサルタント
  8. スポーツ施設及びライブハウス、ナイトクラブの経営
  9. 障がい者の就労支援および就労移行事業
  10. インターネットを利用した各種情報提供サービス

途中までは不動産とかその周辺事業をする会社なんだな・・・という印象だったのが、「飲食もやるの?ナイトクラブ??障がい者??? 何がしたいの??」という印象になっていきます。銀行の担当者にこのような印象を持たれてしまっては、融資審査はかなり厳しいものになることは想像に難くないでしょう。事業目的は一旦、必要なものだけを入れるようにして、経営に余裕が出てきて他のことも展開したくなった段階で、事業内容を追加すれば良いのです。(ただし、融資を受けない場合はそこまで気にしなくても大丈夫です)

役員2人で 株式持分50%対50% のような会社を作ってしまう

仲のいい友達やご夫婦で会社を作ろうとする場合に想定される、一見平等に見えて、実はかなりヤバい定款です。この何が悪いのかが一瞬で分からないのであれば、自分で定款を書くのは止めておいた方が良いです。大事なことなので、もう一度書きます。この問題点がすぐに分からないのであれば、自分で定款を書くのは止めておいた方が良いです。

この場合の問題点は会社で何かを決める際に、2人揃って合意しないと決められないことになります。経営をしていると意見が食い違うことはよくある事ですが、その度に何も決められないようになってしまうと、経営が進まず停滞してしまうことも考えられます。

他にも色々考えられますが、この話題だけで終わってしまいそうなので、次のトピックへ行きます。

会社設立の際は均等割についても忘れずに

さて、元の話題に戻ります。定款認証の費用を半額にして、その分、起業をしやすくしようという政府の試み。でも、会社を作ると利益が上がってようが赤字決算にしようが、均等割という税金が絶対にかかってくることはご存じでしょうか?

均等割

 都道府県民税は資本金等の額によって5つの区分、市町村民税は資本金等の額・従業者数によって9つの区分に分けて、それぞれ下表のとおりです。

資本金等の額都道府県民税均等割市町村民税均等割
従業者数50人超
市町村民税均等割
従業者数50人以下
1千万円以下2万円12万円5万円
1千万円超1億円以下5万円15万円13万円
1億円超10億円以下13万円40万円16万円
10億円超50億円以下54万円175万円41万円
50億円超80万円300万円41万円

※参考:総務省のHPに詳しい説明のページがありますので貼っておきます。

要は、都道府県民税均等割と市町村民税均等割を合計した7万円については、仮に休眠会社でもかかってくるということが読み取れます。会社を作る時は「とりあえず作ってから後のことは後で考えよう!」こういったタイプの方が踏ん切りは付けやすいかも知れませんが、結構細々したコストがかかって来ますので、事前の計画は慎重に立てた方が良いです。その辺りの相談がある程度出来るのも、行政書士に相談するメリットになります。

開業前のご相談は行政書士に一度ご相談ください

実際に定款認証の手数料が安くなるのかどうかはこれからの話になるとして、会社を設立する際は慎重に計画を立てて行くことが必要になります。すでに会社を設立したことのある方に取っては何でもないことでも、初めての方には分からないことだらけで不安なことも多いと思います。そんな時の相談相手としても、行政書士はピッタリですので、ご相談頂けますと幸いです。

投稿者プロフィール

出野 勝巳
出野 勝巳
1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。