抵当権付き物件の賃貸で、抵当権が実行されたら出て行かないと行けない?
賃貸のお部屋探しのシーズンに入りました。頑張ってお探しされて契約となると、宅地建物取引士さんから「重要事項説明」を受けることになります。この時、賃貸借条件や解約の際の条件、特約事項などは誰が見ても大事だと分かると思うのですが、もう一つ大事な所が「登記簿に記載された事項」という欄です。
権利関係に関わる部分なので大事な項目なのですが、ここの部分は宅建士さんの説明も分かりにくいことが多いので、解説の記事を書きました。分かりにくいと思われていた方や新人宅建士さん、宅建や行政書士の民法がいまいち分かりにくい!と言う方は、是非一度お読みください。
目次
そもそも抵当権とは何か?│銀行からお金を借りる際の「カタ」です
この「抵当権」とかいう、不動産取引くらいでしか聞かない言葉がそもそも難しい気がします。簡単に言うと、不動産という高額な買い物をするときには金融機関からお金を借りて買うのが普通です。そして金融機関はこういう条件で貸してくれます。
ユキマサさんの希望通り、¥〇千万円お貸しします。ただし、返せない場合にはユキマサさんのこの不動産を競売にかけられるように「抵当権」を設定させて頂きますね。
分かったにゃ。ちゃんと返すにゃ。
こういった感じで「金銭消費貸借契約」という契約をして、銀行はお金を貸す代わりに、返せなかった場合には不動産を競売にかけたりしてその売買代金の中から優先的に借金を取り立てることが出来る契約をします。この時、不動産に設定される質札のようなものが「抵当権」というものです。
参考:抵当権が実行されるまでのフローは裁判所のHPをご確認下さい。
抵当権が実行されると立ち退かなければ行けないって本当?
抵当権が設定されている物件に住む場合ですが、一定の場合には立ち退きを迫られる場合がある・・・と言われると「えっ? やばい物件借りちゃったの?」と思われる方も多いですが、そこはご安心下さい。ほとんどすべての物件に抵当権の設定がありますので、どこを選んでも同じ説明がなされます。しかし、万が一の場合どうなるのか?を知っておくことは大事なので、基本の部分を解説していきます。
立ち退きが必要なパターン
賃貸契約を交わすよりも前に抵当権設定がされていて、その後に抵当権が実行された時ですが、この場合は新所有者に「出て行って下さい」と言われたら、正当事由の有無にかかわらず、明け渡しが必要になります。ただし、いきなり出て行って下さいと言われると困るので、6か月間の猶予期間が認められます。
また、敷金を預けていた場合には、前の所有者に返還請求権はあるのですが、そもそもローンが払えなくて競売にかけられたオーナーさんなので、敷金を返せるだけのお金を持っているかが微妙な所ですね。(この状態になった方に遭遇したことがないのですが、もしそういった状況になった場合には弁護士さんにご相談頂くことになります)
立ち退きが不要なパターン
上記のケースで新しい所有者さんが「出て行って下さい」と言わなければ、そのまま住み続けることが可能です。(次の募集をするにもお金がかかるので、普通は賃借権はそのまま存続させて住み続けてもらった方が、新しいオーナーさんにとっても金銭負担は少なかったりします)
また、抵当権自体が設定されていない状態で賃貸借契約をして、引渡しを受け、住み始めてから抵当権が設定された場合。この場合はそもそも先に住んでいる方の賃借権が優先されますので、出て行く必要はありません。
抵当権が実行されても、競売までかかることは少ないです
実務上の話を言うと、抵当権が実行されるケースはかなり稀です。オーナーさんは資金繰りが悪くなり始めると、こういった不動産は「任意売却」と言って、抵当権が実行されるよりも前に他の方に売ってしまって、その売買代金からローンの返済をすることの方が多いためです。この場合はオーナーチェンジと同じ状態で処理することになりますので、仮に敷金を預けていた場合には、敷金債務は通常の売買と同様に新所有者に引継がれますのでご安心下さい。
まとめ
抵当権付きの物件を賃貸で借りた場合、抵当権が実行されたら出て行かなければならないかどうかは、抵当権設定の時期によって異なります。
抵当権設定が賃貸物件の引き渡しより前の場合、賃借人は、抵当権の実行が原因で立ち退きをしなければならない可能性があります。
一方、抵当権設定が賃貸物件の引き渡しより後の場合、賃借人は、立ち退きを求められても、応じる必要がありません。
抵当権付き物件を賃貸で借りる場合は、抵当権の実行が原因で立ち退きをしなければならないリスクがあることを認識しておくことが重要です。
投稿者プロフィール
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1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。
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