会社成立の際に作成する定款の「絶対的記載事項」とは?│行政書士が解説します

会社設立の際には、定款に「絶対的記載事項」を記載する必要があります。絶対的記載事項とは、定款に必ず記載しなければならない事項のことで、記載が漏れていると定款自体が無効となります。

本記事では、会社設立の絶対的記載事項について解説させて頂きます。これから会社を設立されようとしている方だけでなく、会社法の対策がどうしても遅れがちになる行政書士受験生にも参考にして頂ける記事にしていますので、確認して頂けますと幸いです。

参考:公証役場のページも合わせて確認して頂くことで、より理解しやすい内容です。

初めに「絶対的記載事項」とは?│行政書士実務上はとても大事です

絶対的記載事項とは、会社法で定められた、定款に必ず記載しなければならない事項です。記載が漏れていると、定款自体が無効となります。絶対的記載事項は、以下の6つです。

  • 商号
  • 目的
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
  • 発起人の氏名又は名称及び住所
  • 発行可能株式総数

会社の設立を検討されている方は、次からの項目でそれぞれ解説をして行きますので、そちらをお読みください。行政書士受験生の方は結構、「会社法」っておろそかになり勝ちだと思います。中には捨て問扱いしている方も多いのでは? しかし、この定款への絶対的記載事項については、本試験でも出題される可能性が高く、また出題された場合には特典もしやすい論点なので「商・目・本・説・発・発」と頭文字だけを取って覚えてしまって下さい。(実際に私が受験生だった頃に使っていたテクニックです)

商号

商号とは、会社の名称のことです。商号は、会社を識別する重要な要素であり、独自性や識別性、他社商号との紛らわしさなどを考慮して決める必要があります。

商号の記載方法は、以下のとおりです。

  • 株式会社または合同会社などの会社形態を記載する
  • 会社の目的を記載する
  • 地域名や業種を記載する
  • 数字やアルファベットなどを使用できる

注意点としては同一住所に同一商号ががあった場合にはその名前は使うことが出来ません。また、すぐ近くに同じ業種・同じ商号があった場合はお客様に勘違いさせてしまったり、最悪の場合は既に設立されている会社からクレームを受ける(最悪の場合は裁判沙汰になります)場合もございますので、周辺に同じような名前がないかは事前に調べておく必要があります。

目的

目的とは、会社の事業内容のことです。会社は、目的に定めた事業を行うことができます。

目的の記載方法は、以下のとおりです。

  • 具体的な事業内容を記載する
  • 将来の事業も含めて記載できる
  • 許認可を必要とする事業の場合は、許認可の種類を記載する

この3点はいずれも大切なポイントです。1番目は事業内容を明確に記載しておく必要があります。これがふわっとした内容で記載をしてしまった場合には3番目に挙げた許認可の審査時に引っかかってしまって、定款認証からやり直しになる場合も可能性としてはありますので注意が必要です。(これらの理由から、会社設立の際の定款作成から定款認証までは行政書士に依頼して頂くメリットの部分になります)
2つめに書いた将来の事業についての記載ですが、これは設立時点ではあまり盛り込み過ぎない方が良いと言われています。なぜなら銀行融資などを申し込む際に「なにをやろうとしている会社なの?」と思われてしまうと融資審査で不利になってしまうためです。

本店の所在地

本店の所在地とは、会社の主たる事務所の所在地のことです。本店の所在地は、例えば「本店は大阪府大阪市に置く」のように、ちょっとざっくり目に書くのが一般的です。(専門的な説明だと最小行政区画で記載します)
これはなぜそうするかというと、仮に事務所移転をする場合などに、このように書いておけば定款の変更は必要なく、登記の変更だけで済むからです。行政区画自体が変更になった場合、例えば「大阪府大阪市」から「大阪府吹田市」へ移転の場合には、定款変更後に登記変更になります。

設立に際して出資される財産の価額またはその最低額

設立に際して出資される財産の価額またはその最低額とは、会社を設立するために出資される財産の価額またはその最低額のことです。基本的には最低額ではなくて出資される財産の価額で書いておいた方が良いです。定款認証の公証人手数料が資本金額によって安くなる場合があるためです。(下記のマーカーの部分をご確認下さい)

<電磁的記録の認証>

  1.    私署証書の認証 ⇒ 11,000円(原則)
  2. 定款の認証
    1. ア   株式会社または特定目的会社の定款認証
      1. 資本金の額等が 100 万円未満である場合は「3万円」(手数料令 35 条 1 号)
      2. 資本金の額等が 100 万円以上 300 万円未満である場合は「4万円」(同条 2 号)
      3. 前二号に掲げる場合以外の場合は「5万円」(同条 3 号)
           定款に資本金の額等が記載されていない場合には、「設立に際して出資される財産の価額」が基準になります。
           「設立に際して出資される財産の最低額」を記載している場合には、手数料令 35 条1号および2号のいずれにも該当しないので、同条3号の「前二号に掲げる場合以外の場合」に該当することになり、「5万円」の手数料額となります。
    2.    イ   一般社団法人、一般財団法人、各種法人の定款認証 ⇒ 5万円(手数料令35 条3号)

参考:日本公証人連合会HP(電子公証)

発起人の氏名又は名称及び住所

発起人の氏名又は名称及び住所とは、会社を設立する人の氏名または名称及び住所のことです。「発起人」という言葉はあまり聞きなれないと思いますが、会社を設立しようと言い出した人=代表者さんとお考え下さい。

発行可能株式総数

発行可能株式総数とは、会社が発行することができる株式の総数です。おススメは1株1万円計算にしておくと計算がしやすいです。そして発行可能株式総数は設立時の資本金の10倍くらいに設定しておくと、10倍までの増資の場合には定款変更が不要になるのでおススメです。

絶対的記載事項の記載上の注意点

絶対的記載事項の記載には、以下の点に注意が必要です。

  • 記載漏れや誤りがないように注意する
  • 記載内容が法令に適合していることを確認する
  • 記載内容が可能であれば将来の事業展開にも対応できるようにする

特に許認可が必要な業種で開業を希望されている場合には、事業目的に該当の文言が入っていなければ許認可が下りないケースもありますので、ご自身で定款を作成される場合には必ず事前に確認をしておくようにしてください。

会社設立を弊所にご依頼頂いた際にかかる費用

会社設立を弊所にご依頼頂いた場合の費用を記載しておきます。慣れない方が手探りで作成するよりもスムーズに、確実に定款認証から許認可までサポート可能ですので、ご検討頂けますと幸いです。

項目金額説明
定款認証手数料約50,000円定款認証にかかる手数料で、公証役場の先生にお支払いするお金です。
収入印紙代(定款貼付)40,000円上記の定款にはる収入印紙代代です。しかし行政書士に依頼した場合は基本は電子定款になりますので、印紙代は不要です。
定款の謄本代約2,000円上記の定款が終わったら、定款の謄本を何通か取っておきます。(大体2~3通取られるのが一般的で、銀行口座開設などに使用します)
登録免許税150,000円資本金により異なりますが、大体は登記の際に150,000円がかかります。
(登記は行政書士は行えませんので本人申請or提携の司法書士さんを紹介します)
行政書士報酬80,000円役員一人の場合の報酬額です。役員が増えたり、会社の形態が株式以外の場合はまた変わります。

他に考えておく必要のある費用というと、登記を司法書士さんに依頼される場合は司法書士報酬が別途かかる(要見積)のと、定款認証が終わったら代表者印(社判)を作る必要があるのでその費用、後は印鑑証明が定款認証と登記で必要になります。(定款認証が終わったら原本は返してくれることが多いですが、念のため2通用意しておいた方が無難です)

まとめ

今回は会社設立の際に必要な定款を作成する際に、必ず記載が必要な「絶対的記載事項」について解説させて頂きました。記載漏れや誤りがあると、定款が無効となり、会社設立が認められない可能性があります。本記事で解説した絶対的記載事項の記載方法や注意点を参考にして、正しく記載するようにしましょう。

また、行政書士試験受験生の方は、会社法を苦手にされている方も多いと思います。しかし、これらは会社の設立に立ち会う際に必ず必要になってくる知識で、開業後にも使える知識になります。会社法の設立と機関設計辺りはおさえておいて頂けると、試験対策上も効果的だと思いますので、是非ご確認下さいませ。

投稿者プロフィール

出野 勝巳
出野 勝巳
1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。