自筆証書遺言を自分で書くにはどうしたら良い?

最近よく話題になることの多い「終活」ですが、何かしないととは思いつつ、何もされていない方は多いのではないでしょうか? 理由としては・・・なんだか難しそう。まだ早い。縁起でもない。費用がもったいない。こういった理由が多いのではないでしょうか?
しかし、例えば認知能力に衰えが見えてからや、お身体を悪くされてから対策しようとしても、中々大変だったりするものです。今回はご自身で遺言書を書ける「自筆証書遺言」の書き方を解説していきます。何から初めて良いか分からない方など、お読みいただけますと幸いです。

自筆証書遺言とは?

ご自身で遺言書の日付・氏名・本文をすべて自署で書いていただく遺言書の形式になります。すべて自署で書いていただくので手間はかかりますが、2019年の法改正で「財産目録」についてはパソコンで作成したり、登記情報や銀行口座のコピーを添付したりなど、自署不要となりました。(ただしすべてのページに署名捺印が必要な点はお忘れないようお願いします)

自筆証書遺言

民法 第968条

  1. 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
  2. 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第1項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
  3. 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。

このように法律にその形式が指定されていますので、例えば「日付」が抜けてしまったり日付を「〇月吉日」など、確定日付でない日付を書いてしまうと無効になってしまいますので、注意が必要です。

~を相続させる。│~を遺贈する。の違い

具体的な文例や書き方の前にもう一点、決まり事というかお約束のようなものですが、財産を法定相続人に相続させる場合には「〇〇を相続させる」と書きます。そして法定相続人以外(例えば友人やお世話になった恩人など)に財産を分け与える場合は「〇〇を遺贈する」と言う書き方になります。ちょっとしたことなのですが、自筆証書遺言の書き方のルールのようなものなので覚えておいてください。

相続財産に不動産がある場合は書き方に注意!

不動産、例えばご自宅を奥さまに相続させるケースを想定します。その時、なんの知識もない状態だと、不動産の表記はご自宅の住所をそのまま書いてしまったりしませんか? もしくは「私の自宅」など雑な表現になってしまうのではないでしょうか? 実はこの書き方は正確なものではありません。どう書けば良いかと言うと、先ずご自宅の登記簿謄本を取ってきてください。そして、一言一句違いなく、そのまま記載するようにしてください。

不動産の表示

土地の場合は・・・所在、地番、地目、地積 を書きます。

建物の場合は・・・所在・家屋番号・種類・構造・床面積 を書きます。

上記の言葉の意味が分からなくても、登記簿謄本を手元にご準備いただければそのまま転記して行くだけなので分かりやすいと思います。

具体的にどう書くか?

では順を追って文例を見て行きましょう。

銀行口座の記載方法

銀行口座の記載方法は以下の通りです。

上記の文例「3.」の項目で記載したそれ以外の財産は誰に相続させるかと言う項目ですが、例えば証券口座を試しに作ってちょっとやってみたけど、いつの間にか忘れていた。などの場合が今後増えてくると思います。必ず入れておくことをおススメします。

遺言執行者の指定

せっかく頑張って書いた遺言書ですが、実現されなければ意味がありません。また、銀行口座の解約手続きなどが必要な場合、何かと複雑な手続きが多く、慣れない方には大変だったりもします。そのため、慣れている方を遺言執行者に定め遺言の内容を実現してもらえるように事前に指定しておくことが可能です。書き方としてはこのような感じです。

遺言執行者を定めていない方がとても多いようです。必ず定めるようにして、滞りなく円滑に遺言の内容が実現できるよう、事前に準備しておくようにしましょう。

余談ですが、遺言執行者を専門家に依頼される方は、そもそも遺言書は自分で書かずに公正証書遺言を選択されると思いますので、自筆証書遺言で遺言執行者に行政書士を指定するというのは少し不自然ではあります・・・苦笑

※おススメは公正証書遺言です。概要は公証役場のページを一度ご覧ください。

付言事項について

相続人さんへのメッセージになる部分です。法的には大した意味をなさない所ではあるのですが、残されるご家族にとってはとても大切な所なので是非とも書いていただきたい点です。

上記の文例ではご家族へのメッセージを書きましたが、他にも「なぜこういった遺言の内容にしたのか?」「あの時はすまなかった的な謝罪」「思い出やエピソード」など、ご家族や友人に宛てたメッセージを書いていただけたらと思います。

日付、住所、氏名、捺印(漏れのないようにお気をつけ下さい)

内容や形式に問題がなくても、例えば日付が漏れていたり、捺印を忘れていたりなどしただけでも無効になってしまう為、漏れがないように注意深く書いて頂けるようお願いいたします。

まとめ

今回は遺言書をご自身で書いて頂けるよう、形式や書き方の話を中心に書きました。もし書かれた後は、出来れば行政書士など、身近な専門家に確認してもらうことをおススメします。法的に無効になったりしないか、形式に不備はないかに加え、その遺言書が元で争いになる可能性など、アドバイスをさせていただけると思います。また、自筆証書遺言の保管制度や、ちゃんとした公正証書遺言を書きたい場合もご相談いただければ対応させていただきますので、お気軽にご相談くださいませ。

※免責事項・・・本記事は法律で求められる要件通りの遺言書を書くための文例を記載しておりますが、ご自身で書かれた場合の法的要件充足を担保するものではありません。予めご了承下さいませ。

投稿者プロフィール

出野 勝巳
出野 勝巳
1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。