貸室・設備等の不具合による賃料減額ガイドラインの解説

賃料減額ガイドラインとは、賃貸借契約において、借主が賃貸物件において生じた不具合により、賃料を減額することができる場合の計算方法を示したガイドラインです。令和2年の民法改正により、これまでの規定が変更されたことに伴った変更になります。

この記事では、変更点の内容を詳しく解説して行きますので、ご確認下さいませ。

参考:

根拠法令:民法611条

(賃借物の一部滅失による賃料の減額等)第611条

  1. 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
  2. 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

改正前の条文はこちら

(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)

  1. 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。
  2. 前項の場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる


分かりやすく言うと、~することが出来る。と言う規定から「減額される」という規定に変更された点になります。

賃料減額の要件

賃料減額をするためには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 不具合が発生していること
  2. 不具合が借主の責任でないこと
  3. 不具合が借主によって通知されたこと
  4. 不具合が修理されなかったこと

賃料減額の計算方法

賃料減額の計算方法は、以下の通りです。

  1. 賃料減額率の決定
  2. 賃料減額額の計算

減額の一覧はこちらの表を参照ください。

まずは、下記のA群に該当するかを確認します。

状況賃料減額割合免責日数
電気が使えない40%2日
ガスが使えない10%3日
水が使えない30%2日

上記Aに該当しない場合は下記B群を確認します。

状況賃料減額割合免責日数
トイレが使えない20%1日
風呂が使えない10%3日
エアコンが作動しない5,000円/月3日
テレビ等通信設備が使えない10%3日
雨漏りによる利用制限5%~50%7日

ガイドラインに法的拘束力はありません

ガイドラインは法律ではなく、あくまでも指針になりますので、法的な拘束力はありません。また、下記の点にもご注意が必要です。

  • 入居者の善管注意義務違反に基づく不具合は除く。
  • 台風や震災等の天災で、貸主・借主の双方に責任が無い場合も賃料の減額が認められる。ただし、電気・ガス・水道等の停止が貸室設備の不具合を原因とするものでなく、供給元の帰責事由に基づく場合は、この限りでない。
  • 全壊等により使用及び収益をすることが出来なくなった場合は、賃貸借契約が当然に終了するため、ガイドラインの対象外である。
  • あくまでも上記ガイドラインは、目安を示しているものであり、必ず使用しなくてはならないものではない。

まとめ

私は不動産管理をしていた時期もございまして、エアコンが効かない。などのトラブルも何度か対応してきています。民法改正により、以前よりも迅速な対応が求められるようになった為、大変な面もございます。その分、入居者入れ替えの際に、古くなった設備は事前に交換しておくなどの、事前の対応が重要になりますので、もし判断に迷われるオーナー様などおられましたら、一度ご相談下さいませ。

投稿者プロフィール

出野 勝巳
出野 勝巳
1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。