マンション標準管理委託契約書の改訂について

2023年9月、国土交通省は「マンション標準管理委託契約書」と「マンション標準管理委託契約書コメント」を改訂しました。この改訂は、マンション管理業を取り巻く環境の変化に対応したものであり、管理組合とマンション管理業者の双方にとって、より良い契約関係を構築するために重要なものです。

※参照:マンション標準管理委託契約書(PDF)

※参照:国土交通省HP

書面の電子化及びIT総会・理事会等DXへの対応

マンション管理業法の改正により、書面の電子化が義務化されました。これを受け、改訂された契約書では、管理組合とマンション管理業者が書面を電子的にやり取りする際に必要な事項を明確化しています。また、IT総会や理事会の開催についても、電子的な開催を可能とする規定が追加されています。

担い手確保・働き方改革に関する対応

マンション管理業の担い手不足や働き方改革の推進が課題となっていることから、改訂された契約書では、マンション管理業者の業務量を適正に管理するための規定が追加されています。また、マンション管理業者の働き方改革を支援するための規定も設けられています。

※また、管理員や清掃員・マンション管理会社のフロントなどへの「カスタマーハラスメント」が問題になっていましたが、この点についても第12条の「有害行為の中止要求」という条文が追加され、コメントにて以下の内容が例示されています。

  • 組合員等が、管理業者の使用人等(管理員や清掃員等)に対して、契約にない行為や管理規約等、総会決議等に違反する行為を強要すること
  • 侮辱したり人格を否定するような発言をすること
  • 文書の掲示やポスティングにより誹謗中傷を行うこと
  • 執拗につきまとったり、長時間拘束すること
  • 執拗に電話をしたり、文書等により連絡すること
  • 緊急でないにも関わらず休日や深夜に呼び出しを行うこと

このような行為が行われた疑いのある場合には「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(厚生労働省)」を参考にして、毅然と対応することとされています。

マンション管理業の事業環境の変化(居住者の高齢化、感染症のまん延等)への対応

マンションの居住者の高齢化や感染症のまん延といった、近年のマンション管理業の事業環境の変化に対応するため、改訂された契約書では、以下の規定が追加されています。

  • 居住者の高齢化に伴う介護や生活支援に関する業務
  • マンション内の感染症対策に関する業務

この改定により、マンションの管理がより充実し、居住者の安心・安全が確保されることが期待されます。

まとめ

2023年9月に改訂された「マンション標準管理委託契約書」と「マンション標準管理委託契約書コメント」は、マンション管理業を取り巻く環境の変化に対応したものであり、管理組合とマンション管理業者の双方にとって、より良い契約関係を構築するために重要なものです。

この改訂の内容を把握し、自マンションの管理委託契約書の見直しを行うことで、より適切な管理委託契約を締結することができるでしょう。

投稿者プロフィール

出野 勝巳
出野 勝巳
1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。