不動産取引における人の死の告知ガイドライン

引越しを考えたときに、どうしても気になってくるのが、「事故物件」とか「いわくつき物件」とかに当たったりしたらどうしよう?といった不安や、不動産屋さんにどのように 対応されるのか分からないことってありませんでしょうか? 実は国が定めたガイドラインが数年前に出来ましたので、一度お読み頂くことで、少しでも安心して頂けたらなーと考えています。是非ご覧下さい。

参考:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました

※前半部分はどちらかというとこのガイドラインの趣旨と家主さんや不動産業者が知っておくべき内容なので、エンドユーザー様は一番下の「告知に関する留意事項」から下をお読みください。

1. 背景と趣旨

1.1 不動産取引における人の死の告知の背景

不動産取引において過去の死亡事案が重要な影響を及ぼす現状に着目。この課題に対処するため、適切な告知が求められ、宅地建物取引業者の法的責任がクローズアップされている。

1.2 不動産取引における人の死の告知の課題

死亡事案の評価は複雑でケースバイケース。心理的瑕疵の影響は物件の特性によって異なり、判断が難しい。この課題に対処するため、明確な基準が求められている。

1.3 ガイドライン制定の必要性

国土交通省が開催した「不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会」を経て、過去の裁判例や実務を踏まえ、トラブル未然防止のために本ガイドラインを策定。

2. ガイドラインの位置づけ

2.1 宅地建物取引業者の義務

宅地建物取引業者は、売主・貸主に代わり、重要な告知を適切に行う責任がある。不動産の専門家である彼らが円滑な告知を実現することが期待されている。

2.2 民事上の責任

本ガイドラインに基づく対応があったとしても、個別の取引における責任は契約内容に依存。宅地建物取引業者はトラブル未然防止の一翼を担いつつも、個別の契約に従うべきである。

3. ガイドラインの内容

3.1 死亡事案の評価

  • ケースバイケースの評価を重視し、心理的瑕疵の有無や程度を物件の特性に合わせて検討。
  • 地域性や時間の経過を考慮して客観的な判断を行う。

3.2 宅地建物取引業者の対応

  • 宅地建物取引業者は法的責任を認識し、本ガイドラインに基づき、適切な告知と誠実な対応を実施する。
  • 不動産の取引においてクリアな情報提供がトラブルの未然防止に繋がる。

3.3 トラブル時の対応

  • 本ガイドラインに従わなかった場合でも、法的違反とは直結しないが、行政監督時に参考にされる可能性がある。

3.4 未然防止の期待

  • 本ガイドラインに従わなかった場合でも、法的違反とは直結しないが、行政監督時に参考にされる可能性がある。

3.4 未然防止の期待

  • 宅地建物取引業者が本ガイドラインを遵守し、適切な対応を行うことで、取引当事者間や宅地建物取引業者とのトラブルを未然に防ぐ期待が高まる。

4.本ガイドラインの範囲と調査手順

4.1不動産における死亡事案

本ガイドラインは、不動産取引の対象となる不動産に生じた人の死に関する事案を取り扱います。

4.2居住用不動産の重要性

居住用不動産における人の死は、買主・借主にとって取引の判断に大きな影響を与える可能性が高いと考えられ、その特に居住用不動産に焦点を当てています。

5.調査の対象・方法

5.1宅地建物取引業者の一般的な義務

宅地建物取引業者は通常の業務において情報収集を行うが、人の死に関する事案に関しては、特段の法的義務は課されていません。

5.2独自の調査義務の限定

人の死に関する事案については、売主・貸主からの告知がない場合でも、特段の理由がない限り、宅地建物取引業者は自発的な調査義務を負っていないと考えられます。

5.3調査の留意事項

調査過程においては、近隣住民への聞き込みやインターネット調査など、慎重かつ合法的な手法が必要です。民事上の責任を回避し、個人情報を慎重に取り扱います。

6.媒介を行う宅地建物取引業者のアプローチ

6.1売主・貸主との明確な情報収集

媒介を行う宅地建物取引業者は売主・貸主からの確認を重視し、事案の有無を明確にし、誠実な対応を心掛けます。

6.2告知書等の利用

告知書等への事案の記載を通じて、情報提供を促進し、トラブル未然防止の一翼を担います。

6.3トラブル時の有効な証拠

調査結果は後日のトラブル時の有効な証拠となり得るため、告知書等への適切な記載を奨励します。

告知に関する留意事項

人の死に関する事案は日常的に発生していますが、それが心理的瑕疵に該当するかやその継続性の評価は様々です。この評価は事案の態様、周知性、物件の立地などに依存し、時代や社会の変化に伴って変動する可能性があります。心理的瑕疵は時間の経過とともに希釈され、やがて消滅することもあります。不動産取引において人の死に関する事案の評価は個々の買主・借主の内心に依存し、その影響の程度も異なります。

本ガイドラインでは、裁判例を踏まえつつ、宅地建物取引業者による告知の範囲として妥当と考えられる一般的な基準を以下に示します。

1. 宅地建物取引業者が告げなくてもよい場合

  • 自然死や日常生活での不慮の死が発生した場合は、原則として告げなくてもよい。
  • 事故死に相当するものであっても、日常生活で生じた不慮の事故による死は告げなくてもよい。

2. 賃貸借取引の対象不動産において

  • 自然死や日常生活での死が発生してから概ね3年が経過した場合は、原則として告げなくてもよい。

3. 特殊な事情がある場合

  • 上記ケース以外で取引の相手方に重要な影響を及ぼす場合は、告げなければならない。

4. 留意事項

  • 亡くなった方やその遺族等の名誉及び生活の平穏に十分配慮する。
  • 氏名、年齢、住所、具体的な死の態様などの詳細は告げない。

まとめ

このガイドラインは、現時点での判断基準であり、将来の変化にも柔軟に対応できるよう、裁判例や社会情勢の変化を踏まえ、適宜見直しを行う方針です。個々の不動産取引では、買主・借主の納得が最重要であり、宅地建物取引業者は慎重に対応し、トラブルの未然防止に努めるべきです。

投稿者プロフィール

出野 勝巳
出野 勝巳
1980年生まれ。若い頃はしがないバンドマンでヴォーカルをしていた。
不動産会社に勤務する傍ら、お酒を止めたことを機に39歳から勉強を始め、宅建を皮切りに管理業務主任者、簿記2級、行政書士と資格取得を通じてステップアップし、開業に至るという変わった経歴を持つ。